嵐の中 きみは… ある蝉のこと
もう 季節も すっかり変わったのに
こんなところに ひとりきり
そう言えば…
「幸福の王子」という物語を思い出す。
南の国に帰ろうとしていたツバメが
町に立つ銅像の王子さまのお遣いとなり
貧しい人々のもとへ 王子さまに飾られてる
宝石を 運び続ける
やがて 冬が来て ツバメは 死んでしまい
王子さまは それをなげき悲しみ 心臓が壊れてしまう。
体中の宝石も金箔もなくなった銅像は 取り壊され
王子さまの心臓もゴミ捨て場に捨てられてしまう。
ある日…
神様から 「あの町で もっとも尊いものを2つ持ってきなさい」
そう言われた天使たちは ごみ捨て場から王子さまの心臓と
ツバメの亡骸をもって 天国に帰っていったという。
菩提樹の枝先の
透き通った羽の この蝉は
手を伸ばしても
なにをしても 微動だにせず
しっかり枝に掴まったまま…
一匹の蝉が選んだ死に場所は
樹齢700年の菩提樹の枝先だった。
撮影:2014/10/12
【MEMO】 西大寺さん境内にて
「死に場所」と書きましたが ほんとは 「どんな生き方をしたのだろう」と
一匹の蝉の姿が 大きく 大きく 見えました。